記事公開日:2022年4月21日
最終更新日:2022年10月28日
身近な方に赤ちゃんが生まれるとこちらもウキウキ! お祝いにご祝儀(お金)を贈るなら、基本の贈り方マナーを把握して用意しましょう。出産祝いならではの心遣い、迷いどころを解説してきます。
おめでたいお金を包むご祝儀袋は、お金を入れる「中包み(中袋)」と、のしがついた「上包み(外包み)」の2重セットが基本。一枚の紙を折り畳んで包むタイプのほか、封筒タイプがあります。出産祝い用として販売されているものであれば間違いはありませんが、贈る相手と中に包む金額に合わせて選ぶことが大切です。
ご祝儀袋を選ぶときに悩むのが、水引の形。水引は、結びほどきができる「蝶結び」(別名:花結び)と、一度結ぶとほどけない「結び切り」の2種類がありますが、と、出産祝いは何度でもうれしい出来事なので“繰り返し”を意味する「蝶結び」を使います。
水引は3、5、7と奇数の本数で形作られており、中に入れる金額に合わせて選びます。一般的な1万円~3万円を包むなら「5本」が◎。5万円以上の高額なら「7本」で華やかに。1万円以下なら「3本」、または水引がプリントされ中包みも省略された封筒タイプのカジュアルなご祝儀袋でもいいでしょう。
ご祝儀袋の色やデザインは、慶事にふさわしい明るく華やかなものを選びましょう。伝統的な色なら赤白や金使いで。優しいパステル系も出産祝いらしくておすすめです。
近年は、おしゃれでカジュアルなデザインのご祝儀袋もたくさん! かわいい絵柄付き、水引の代わりにリボンが結ばれているもの、広げるとスタイになる布製なども話題です。
水引がないご祝儀袋を選ぶ際は、袋自体の価格を目安にしてご祝儀額とのバランスを図ります。袋がゴージャスなのに中身は少額……など極端な不釣り合いさえ気を付ければ、比較的自由に選んでOKです。
✓ 水引の形は「蝶結び」
✓ 水引は本数は「3、5、7本」から包む金額に合わせて選ぶ
✓ 袋の色は慶事を表す赤白。パステル系も◎
× 「結び切り」の水引(「あわじ結び」「梅結び」などは“一度限り”の意味をもち、結婚祝いやお見舞い、弔事用なのでNG)
× 10本の水引(結婚祝い用なので適しません)
× 黒が入った暗いデザイン(弔事用なのでNG)
ご祝儀袋が用意できたら、次は表書きへ! 受け取った側が管理しやすいよう、「上包み(外包み)」、「中包み(中袋)」それぞれに名前や金額を記入します。必要な道具と記入内容を解説します。
※あらかじめ印字や記入欄が設けてある場合は、それに従いましょう。
※上包みに直接書くのが難しいデザインの場合は、短冊を使用します。
※中包みが付いていないタイプの場合は、代わりに白封筒かA4サイズ程度の白紙(和紙、コピー用紙など)を用意してお金を包みます。
祝福の気持ちを表すため、毛筆を使用し、濃墨(濃い黒)で大きくはっきりと書きます。筆ペン、毛筆に近い黒の太めのサインペンもOKです。なお、中包みの裏に書く住所、氏名は、読みやすさ優先で細めのペンの使用も可です。ただし、濃く大きくはっきり書くことは忘れずに。
水引の上中央に、そのご祝儀の名目として記載します。お祝いごとに一般的に使われるのは「御祝」。出産祝いの意味を込めるなら、「御出産御祝」(ひらがなを含めて「ご出産御祝」「ご出産お祝」でも)が適しています。親しい間柄なら「ご出産おめでとうございます」などメッセージにしたり、「お洋服料」など使ってもらいたい用途にしてもよいでしょう。
水引の下中央に、贈り主の名前を書きます。名目よりやや小さめがいいでしょう。誰からのご祝儀かすぐわかるよう、フルネームではっきりと記入を。複数人で贈る場合は、スペースに合わせて略します。
[個人で贈る]
→フルネーム
[連名で贈る(3名まで)]
→全員フルネーム。右から目上の人順または五十音順で、均一な大きさで書く
[連名で贈る(4人以上)]
→中央に代表者のフルネーム、左にやや小さく「外一同」と書く
[夫婦や家族で贈る]
→中央に代表者のフルネーム、左にその他の家族の名を並べて書く。人数が多ければ、代表者の左にやや小さく「家族一同」とする。姓が異なるならそれぞれフルネームで
[会社名・所属名を入れたい]
→一番右に、名前より小さめに書く
表面の上中央に金額を記載します。「金 壱萬圓」のように、大字か漢数字を用いて縦書きで入れましょう。難しい大字を使用することで、金額の書き換えを防ぐ意味があります。「金」の後は少し字間を空けると、読みやすくバランスがきれい。「圓」は「円」でも可です。
なお、最後に「也」を入れる例も見られますが、昔に価格表などにつけていたものなのでいりません。
合計金額を書きます。
[5000円]→金 伍阡圓
[1万円]→金 壱萬圓
[3万円]→金 参萬圓
[5万円]→金 伍萬圓(五でも可)
[10万円]→金 壱拾萬圓
裏面の左下には、贈り主の郵便番号、住所、名前を記入します。中央にのりづけがある場合はそこが下座に当たるので、右に住所、左に名前を書いてもOK。この住所は、受け取った側が内祝いの送付に利用するものなので、マンション名や部屋番号までわかりやすく記載しましょう。
連名の場合は裏に住所を書ききれないので、表書きと同じ書き方で名前のみ記載。さらにA4サイズ程度の白紙(和紙、便せん、コピー用紙など)を用意し、全員の名前と住所を記載して同封します。書き方は右から目上の人順、または五十音順。組織の場合は住所は1つでOK。なお、上司が多めに出しているケースもありますが、そのことについて特記はしません。金額が異なることを伝える必要があるなら、連名ではなく個別に贈りましょう。
✓ 使うのは毛筆(筆ペン)か黒の太めサインペン
✓ 上包みは、上中央に名目(「御祝」または「御出産御祝」)、下中央に贈り主の名前を書く
✓ 中包みは、表面の上中央に大字(または漢数字)で金額を、裏面の左下に住所と名前を書く
× 薄墨、かすれたインク、細い線で記入(悲しみを表す弔事の書き方なのでNG)
× 表書きをボールペンや細いサインペンで記入(祝福を表す道具としては簡易的なのでNG。中包みの裏に書く住所、氏名のみ可)
× 「寿」の表書き(結婚祝い用でなので適しません)
△ 4文字の表書き(受け取る側が不吉に感じる場合があり、直筆なら避けた方が無難。「出産祝い」ではなく「ご出産祝い」など5文字にしたり、「祝 御出産」など1文字空けることをおすすめします。印字されている場合はそのまま使用してかまいません)
△ ご祝儀額を「一」「三」など漢数字で記入(略式の印象を与えるので大字で書くのが無難です)
ご祝儀袋が用意できたら、いよいよお金を包みます。用意する紙幣の状態、ていねいな包み方など、気遣いの一つ一つが受け取る相手にもきっと伝わります。
“人に差し上げるお札はまっさらなものを”という意味で、新札を用意するのがマナー。「赤ちゃんのために用意しました」という心遣いが伝わります。さらに新型コロナウイルス蔓延を経験したことからも、清潔なお札で贈ることはとても大切です。銀行や郵便局で交換してもらえるので、余裕をもって用意しましょう。なお、流通済みでも折り目のないきれいなピン札も可です。
複数人で千円札を出し合った場合は、万札に両替します。
用意した新札を中包みへ入れます。ご祝儀の場合、お札の向きは人物画が表&上。中包みの表面と揃えて入れます。お札を取り出したとき肖像画から出てくる形が正解です。のりで封をする必要はありません。昔はのり付けの習慣がないですし、受け取った側の開封の手間も避けられます。封留めシールが付属している場合は使用しても可です。
表面を揃えて、中包みを上包みに入れ、裏側は「上→下」の順で畳みます。“喜びで上を向く”意味で折り返しを上向きにしましょう。
包み終わったご祝儀袋は、傷めないように袱紗に包んで持参します。袱紗は、慶事用の明るい色(または慶弔兼用の紫)を用意しましょう。
渡す際は袱紗からていねいに取り出し、相手側に向けて両手で渡します。
直接渡さず郵送する場合は、現金書留で。専用封筒にご祝儀袋をそのまま入れます。
その際、メッセージカードや一筆箋を添えても喜ばれます。筆記用具の決まりはありませんが、表書きと同様、濃くはっきりと書くことが大切。忌み言葉が含まれていないか注意しながら、心を込めたお祝いの文章を綴りましょう。
✓ お札は「新札」を用意
✓ お札の向きは人物画が「表&上」
✓ 上包みの裏の折り返しは「上」向き
✓ 袱紗に包んで持参する
× 使用感のある古札(NG。人に贈るお札は清潔なものを包んで)
△ ピン札(新札と差のないきれいなものなら可)
× お札の人物画が裏&下向き(人に差し上げるものなので表&上を向けます)
× 折り返しが下向き(弔事用なのでNG)
× ご祝儀袋が入っていたビニール袋に戻して渡す(ビニール袋は販売時の梱包でありごみなのでNG)
ご祝儀の準備ってマナーがたくさんあってややこしいと思われるかもしれませんが、その一つ一つには、相手に気持ちよく受け取ってもらうための心遣いが反映されています。一度覚えてしまえば、今後のお祝い事にずっと使える知識。赤ちゃんの顔を思い浮かべながら楽しく用意しましょう。
岩下宣子さん マナーデザイナー
現代礼法研究所主宰。NPO法人マナー教育サポート協会理事・相談役。企業をはじめ、学校・商工会議所・公共団体などで、マナー指導や講演などを行う。「マナーとは相手を思いやること」を信条に、ゼクシィでも悩める花嫁さんへの愛あるアドバイスでおなじみ。マナーに関する著書多数。