記事公開日:2019年8月30日
最終更新日:2022年10月12日
結婚のお祝いをいただいたらまずはお礼状を。内祝い(お返し)の品物を送る際には、送り状やメッセージカードを添えるのがマナーです。この記事では、お礼状や送り状のマナーや文例、封筒に入れて送る際の宛名の書き方までご紹介します。
結婚のお祝いをいただいたときに送るのがお礼状です。これはお祝いをいただいたら3日以内に送るのがマナー。手紙ではなく、直接会ったり、電話をしたりして、お礼を伝えるのでも構いません。親しい間柄であれば、SNSなどでもよいでしょう。
一方、結婚式終了後、内祝いの品物を送る際に添えるのが送り状やメッセージカードです。送り状は品物を送った旨を知らせるものになりますが、もちろんお祝いをいただいたお礼も付け加えましょう。内祝いは結婚式終了後、1カ月以内に送ります。なお、送り状が品物に同梱できない場合は別途送りますが、その際は品物よりも先に着くように手配します。
お礼状や送り状の便箋は、白の縦書きのものが正式とされますが、送る相手によって臨機応変に選んで構いません。友人などへはイラスト入りの横書きの便箋などを使ってもよいでしょう。封筒は便箋とセットになっているものを使うと便利です。別途用意する場合は、便箋を三つ折りにして納まる大きさを選びます。長方形で短辺に封入口がある和封筒を使用するのが一般的ですが、便箋や送る相手に合わせて長辺に封入口がある洋封筒を選んでも問題ありません。
一筆箋は普通の便箋よりは文字を書くスペースが少ないので、忙しくてお礼状を落ち着いて書けないときなど、取り急ぎお礼をしたためて送っておくという使い方ができます。また、送り状としては一筆箋のほか、メッセージカードも使用できます。一筆箋やメッセージカードを品物と一緒に送る際には、封筒に入れなくても問題ありませんが、封筒に入れると改まった感じが出ます。
筆記具は黒または濃いブルーの水性ボールペンか万年筆がおすすめです。ビジネスで使うようなボールペンやサインペンはカジュアルな雰囲気になってしまうので、避けましょう。なお、パソコンで書くのでも問題はありませんが、署名や宛名は必ず自筆で入れます。
結婚のお祝いをいただいたことに対する感謝の気持ちを述べましょう。また、お祝いにいただいた品物についての感想を具体的に述べると喜ばれます。お金をいただいた際には、何に使う予定なのかに触れるのもおすすめです。また、新生活に向けての抱負なども盛り込むとよいでしょう。なお、結婚のお祝いは夫婦ふたりに贈られるものなので、お礼状や送り状にはふたりの氏名(旧姓も添える)を入れましょう。
もともと日本では文章に句読点を付ける習慣がありませんでした。毛筆で縦書きで書く手紙には句読点を付けないのが一般的で、改まった手紙の場合は句読点を付けないのが慣例ですが、それほど気にすることはありません。親しい友人などであれば、句読点を付けて書いても構わないでしょう。とはいえ、「お祝いごとの手紙には句読点を避ける」ことがマナーがとして広まっているので、マナーに厳しい人や年長者へは句読点は付けずに書くのが無難でしょう。
お祝いごとには忌み言葉は使用しないほうがよいとされます。他の言葉に置き換えられるものはできるだけ変更し、こうした言葉は使わないように気をつけるとよいでしょう。なお、重ね言葉でも「ますます」「いよいよ」など、文章の中でポジティブな意味合いで使われる場合は、使用しても構わないという考え方もあります。また、忌み言葉や重ね言葉でなくても、ネガティブな意味合いに取られる言葉は、なるべく使わないようにするのがおすすめです。
【忌み言葉】
去る、帰る、戻る、切れる、破れる、別れる、離れる、終わる、出る、返す、失う、割れる、捨てる、飽きる、冷える、短いなど
【重ね言葉】
返す返す、次々、重ね重ね、くれぐれ、徐々になど
便箋を使ってお礼状や送り状を書く場合の基本構成は以下の通りです。
<前文>
頭語や時候のあいさつ、相手の安否を尋ねる言葉など。
<主文>
お祝いをいただいたことへのお礼や新生活への抱負など。手紙の核となる部分。
<末文>
結びの言葉。相手を気づかったり、今後のおつき合いを願ったりする内容。結語。
<後付け>
ふたりの名前や日付などを入れる。
【頭語と結語】
拝啓-敬具、謹啓-謹白、前略-草々など。頭語は書かずに結語を「かしこ」としてもいい(主に女性が使う)。
書き方のルールは特にありません。文章を書くスペースが少ないので、頭語や時候のあいさつ、結語などは省いて構いません。冒頭に相手の名前を書き、すぐに本題に入りましょう。結びの言葉で締めくくり、最後にふたりの名前を入れます。
拝啓 仲秋の候 ●●先生におかれましてはお元気でご活躍のご様子 お慶び申し上げます
さて このたびは私たちの結婚に際し 過分なお祝いと温かなお祝いの言葉をちょうだいし 誠にありがとうございました いただいたお祝いは 欲しかったコーヒーメーカーを購入するために使わせていただきます
来月からふたりでの生活が始まります 先生から教えられた「思いやりの心」を忘れずに ふたりで仲良く協力し合いながら生活したいと思います これからもどうぞご指導お願いします
時節柄くれぐれもご自愛ください
略儀ながら書面にてお礼申し上げます 敬具
このたびは結婚のお祝いありがとうございました
高性能のオーブンとともに おばさんの自慢のケーキのレシピまで! 私が好きだったこと 覚えていてくださったんですね
なにかと気ぜわしい毎日ですが ご自愛ください まずはお礼まで かしこ
拝啓 朝晩に吹く風にようやく秋らしさを感じるようになりました
このたびは私たちの結婚に際して素敵なお祝いの品をいただき ありがとうございました クリスタルのワイングラスは大切に使わせていただいています
おかげさまで●月●日に結婚式を挙げ 新生活がスタートしました これからはふたりで力を合わせ ●●さんのような素敵な家庭を築いていきたいと思っています
心ばかりの品を内祝いとしてお送りいたします ぜひお納めくださいますようお願い申し上げます
まだ暑さが残る毎日ですので 体調にはお気を付けてお過ごしください 敬具
先日は結婚のお祝いありがとう 身内での結婚式を挙げ 新生活がスタートしました
ささやかですが お返しの品をお送りします お口に合えばいいのですけれど
落ち着いたら お会いしましょう
手紙の冒頭部分につける時候のあいさつには漢語調のものと口語調のものがあり、漢語調は目上の人やマナーに厳しい人など、口語調は友人や親しい間柄の人などというように、相手によって使い分けます。
以下に、時候のあいさつの例をご紹介します。その時の天候や気分に合わせて使い分けるといいでしょう。たとえば、3月の上旬なら早春の候、20日前後であれば春分の候などとします。
<1月>
新春の候/初春の候/厳寒のみぎり/例年にない厳しい寒さが続いています/正月気分もようやく抜けて
<2月>
立春の候/余寒の候/残雪の候/立春とは名ばかりで寒い日が続きます/梅のつぼみがほころび始め
<3月>
早春の候/春分の候/雪解の候/水ぬるむころ/桃のつぼみも膨らみ/日増しに温かさを感じるようになりました
<4月>
陽春の候/桜花の候/春暖の候/桜の花が美しく咲き/うららかな春の日差しが心地よい季節になりました
<5月>
葉桜の候/新緑の候/立夏の候/初夏の風が心地よく頬をなでていきます/みずみずしい若葉が目にまぶしく
<6月>
麦秋の候/長雨の候/向夏の候/初夏のみぎり/うっとうしい雨が降り続いています/梅雨明けが待ち遠しい毎日が続きます
<7月>
盛夏の候/酷暑の候/大暑の候/梅雨が明けて本格的な夏がやってきました/例年にもまして厳しい暑さが続き
<8月>
残暑の候/晩夏の候/立秋の候/涼しい季節を待ち焦がれる毎日/残暑が体にこたえる毎日ですが
<9月>
初秋の候/重陽の候/秋分の候/朝晩にはようやく秋の気配が感じられるようになり/実りの秋を迎えて
<10月>
仲秋の候/紅葉の候/菊花の候/日ごとに秋も深まりを見せて/スポーツやレジャーが楽しい季節です
<11月>
晩秋の候/向寒の候/落葉の候/いつの間にか寒さが身にしみるようになりました/道に舞う落葉に秋の深まりを感じます
<12月>
初冬の候/師走の候/霜寒の候/寒さが本格的になってきました/町にクリスマスソングが流れ出しました
和封筒の場合、縦に宛名を書くのが一般的です。住所は名前よりやや小さめの字で書き、2行になる場合は、2行目の文字は1行目よリも下げて書きます。切手は左上に貼ります。
差出人(裏書き)は、本来は封筒の中央に張り合わせ部分があるものは、張り合わせ部分の右に住所、左に名前を書いていました。いまは左側に寄せて書くことも多くなっています。
また、郵便番号の枠がある場合は、枠に合わせて住所と名前を書きます。差出人の名前は、宛名よりは小さな文字で書きます。封入口を閉めてのり付けしたら、「〆」「封」「緘」などの封字を上から書き入れるか、封緘のスタンプを押したり、シールを貼ったります。慶事の場合は「寿」などの文字を使うこともあります。
和封筒の封入口が右側に来るように置き、宛名を書きます。住所と名前の文字の大きさのバランスは縦書きと同様です。切手は右上に貼ります。郵便番号の枠が印刷されている場合は、枠内に郵便番号を書き入れます。ない場合は、住所の上に郵便番号を書きます。
裏書きは、封入口(ふた)が右になるように封筒を置き、下部の右に寄せて住所と名前を書くようにします。
はがきサイズの洋封筒の場合は、縦書きで宛名を書くこともできます。縦書きの方が改まった雰囲気があります。書き方は和封筒の縦書きの場合と同様です。
裏書きは、封入口(ふた)が右向きになる位置に置いて書き入れます。
洋封筒の場合でも、宛名は和封筒の書き方と同様です。裏書きは封入口の下、中央またはやや右に寄せて書きます。なお、横書きの場合は封字は不要とされますが、封緘のスタンプやシールなどは構いません。
忙しいとついつい「品物だけ送っておけば……」という気持ちになりがち。でも、お礼状や送り状は人間関係を円滑に進める上でとても大切なツール。お祝いのお返しという節目の時こそ、きちんと送りたいものです。相手を思って丁寧に紡いだ文章は、きっと相手の心に届くはず。ご紹介した文例を参考に、マナーを守ってお礼状を出してみましょう。
岩下宣子さん マナーデザイナー
「現代礼法研究所」主宰。NPOマナー教育サポート協会理事・相談役。全日本作法会の内田宗輝氏、小笠原流・小笠原清信氏のもとでマナーや作法を学び、マナーデザイナーとして独立。企業や学校、公共団体などで指導や講演会を行うほか、多数の著作も手掛ける。