記事公開日:2019年8月30日
最終更新日:2022年7月19日
入園・入学のお返しと思われている「内祝い」ですが、本来は身内のお祝いのことで、家族が親戚やお世話になった人たちを宴席にお招きし、わが子の成長を共に喜んでもらうのが事の始まりでした。その後、時代の流れと共に内祝いの意味が少しずつ変わって解釈されるようになり、今はお祝いをくださった方への「お返し」として品物を贈るのが一般的になりつつあります。ここではそんな入園・入学祝いのお返し(内祝い)のマナーついて、贈る時期や内容、金額相場からのし紙のことまで幅広くご紹介します。
祖父・祖母をはじめ、主に親族からいただくことの多い入学祝い。贈られる人がお返しをするだけの経済力を持たない子ども本人ということもあり、建前としては「お返しは不要」とされています。
とはいえ何かをいただいたらきちんとお礼をするのが世間一般のマナーですし、全くスルーするのは気が引けるもの。もしお返しはいらないと言われた場合も、「お祝いしてくださったことへの感謝の気持ちです」と一言添えて、気を遣わせない程度の金額のものを渡してはいかがでしょうか。いただいて迷惑と感じる人はいないので、遠慮せずこちらの思いをきちんと形にして贈りましょう。
なお、内祝いに関するしきたりや慣習は地域によって異なることがあり、親族間での取り決めがある場合も。同じ年頃の子どもがいる家庭同士なら、お互いさまということでお礼の言葉だけで済ませるケースも少なくありません。いずれにせよ「絶対」ということはないので、迷ったら親など周囲の人にも確認してみましょう。
入学祝いをいただいたら、入学式から3週間~1カ月以内にお返しするようにしましょう。何カ月も前にいただくことは少ないと思いますが、万が一早めにいただいてしまったら、先に手紙や電話でお礼を伝え、お返し自体は入学式の後に渡します。
お返しは「入学内祝」や「内祝」の名目で、のし紙を掛けて贈りましょう。子どもへの贈り物でもあるので、親からのお礼状に加え、本人からの絵や手紙、入学式の写真や動画などを添えるといいでしょう。大事なのは子どもが自らきちんとお礼を伝えること。そのあたりを親子で一緒に考えてみることがよい経験にもなります。
多くの人に選ばれているのは、日持ちのする和洋菓子や、お茶・コーヒー・ジュースの詰め合わせ、お赤飯やお米といった食品関係のギフト。遠方に住む人には地元の名産品なども喜ばれそうです。食品以外のものについては相手の好みもあるので、自分で選べるカタログ式ギフトやタオル・洗剤・入浴剤といった消耗品などの日用雑貨がおすすめ。入学式の写真やお礼のメッセージカードも一緒に添えて送りましょう。
・ハンカチ……別れの涙を連想させるため
・日本茶……香典返しなど弔事で用いることが多いため
・時計……「勤勉に」という意味があるため目上の人には不向き
・くし……響きが「苦」や「死」を連想させるため
・現金……目上の人に渡すのは失礼にあたるため
そのほか商品券やプリペイドカードなどもよく選ばれるギフトですが、金額がはっきりわかる分、お返しに用いる際には要注意。「半返しルール」を考えたときに、贈った側が自分のお祝いの額が見透かされたように感じる恐れがあるので気を付けましょう。
お祝いごとに関するお返しは「半返し」と昔から言われているように、いただいたお祝いの半額もしくは3分の1程度を目安にお返しの品を考えましょう。ちなみに入学祝いは5000円くらいから上は5万円を超すケースもあり、かなりまちまちな印象です。贈る側との間柄によっても変わり、一般的に祖父・祖母からは高額なお祝いをもらうケースも少なくないようですが、相応のお返しをするとなるとお互い負担に感じてしまうので、原則にこだわらずできる範囲で用意しましょう。
結論から言えば、お返しは基本的にしなくても大丈夫。祖父母にとって孫の晴れ姿を見ることが何よりの「お返し」であり、喜んで使ってくれることが祖父母の喜びでもあるからです。半額や3分の1のお返しルールにとらわれる必要もありません。
とはいえきちんとお礼は伝えたいので、品物ではなく別の形で検討してみてはいかがですか? 例えば入学式の後にお祝いの席を設けて一緒に食事を楽しむのもいい方法ですし、遠く離れていてなかなか会えない場合は、ランドセルを背負った入学式の写真を送って、大事に使っていることを報告しましょう。手紙や電話、ビデオメッセージなどで子ども本人が直接お礼を伝えることも大切です。
入学祝いのお返しは、相手との間柄や親族間のルール、地域のしきたりなどをよく考え合わせてフレキシブルに行うことをおすすめ。その上で、品物でお返しをする際には相場やマナーを押さえ、子どもも一緒にきちんとお礼を伝えるようにしましょう。
岩下宣子さん マナーデザイナー
現代礼法研究所主宰。NPO法人マナー教育サポート協会理事・相談役。企業をはじめ、学校・商工会議所・公共団体などで、マナー指導や講演などを行う。「マナーとは相手を思いやること」を信条に、ゼクシィでも悩める花嫁さんへの愛あるアドバイスでおなじみ。マナーに関する著書多数。