記事公開日:2022年4月20日
最終更新日:2022年7月21日
男の子は生まれてはじめての5月5日、女の子は3月3日に迎える「初節句」。大きな病気に見舞われないように、災難に遭わないように、赤ちゃんの健やかな健康を願う日とされています。初節句の日は家族でどんなことをして過ごせばよいのでしょうか?男の子、女の子それぞれの基本的な過ごし方やお祝いを贈る際の基本的なマナー、お祝いの金額の相場などをご紹介します。
生まれた赤ちゃんが初めて迎える節句を初節句といい、女の子は3月3日の「桃の節句」、男の子は5月5日の「端午の節句」が初節句にあたります。初節句は、赤ちゃんの健康を願うおめでたい日のひとつとされています。お祝いをすることで悪いもの(邪気)を払う、厄払いの意味も込められています。この行事は江戸時代の中頃から季節の変わり目の節々に無病息災を願ったのがはじまりといわれています。
5月5日の男の子の初節句である「端午の節句」には兜や五月人形、3月3日の女の子の初節句である「桃の節句」には雛人形を用意し、お祝いの当日は赤ちゃんと親、祖父母も呼んで食事会を開き、みんなでおめでたい一日を祝います。雛人形、五月人形共に、不浄や邪気を追い払い無病息災を祈願するためのものとされています。基本的には生まれてはじめて迎える初節句の日にお祝いをしますが、赤ちゃんが生まれて1~2カ月以内の場合は、翌年に初節句を持ち越すケースもあります。赤ちゃんのその時の月齢や産後のママの体調を考慮して、その年にお祝いをするのか、翌年に持ち越すのかを家族で決めましょう。
「端午」は月はじめの午の日を指します。「午」は「五」とも読めるため、5が重なる「5月5日」が端午の節句の日になったと言われています。
3月上旬の巳の日を「上巳の節句」と言い、もともと古代中国では邪気に見舞われやすい日として、上司の節句に水辺で禊を行い、自分の身代わりとして汚れを託した人形を川に流したと言われています。そこから3月3日を正式な桃の節句とし、ひなまつりの日として発展したと言われています。
男の子の初節句である「端午の節句」では、兜に代表される「五月人形」を飾ります。五月人形には、身を守るために不可欠な兜などで「子どもを守る」という意味が込められています。また、強い生命力を持つ鯉をイメージした鯉のぼりを飾ることで、子どもがたくましく強く生きていけますように、という願いを込めます。
端午の節句を象徴する食べ物と言えば、柏餅やちまきが代表的です。柏の葉は新芽が出るまで古い葉が落ちないことから「子孫繁栄」を意味し、葉に巻かれているちまきを食べることで邪気を払うとも言われています。そのほかにも鯛、カツオ、豆、タケノコなどが縁起のよい食べ物だとされ、カツオのたたきや赤飯なども食べるとよいと言われています。
端午の節句には、菖蒲湯に浸かることも縁起がよいとされています。菖蒲の独特の香りが邪気を払うとも言われており、昔の人は体を清め、厄除けをする目的から菖蒲湯に入っていたそうです。
5月5日は「こどもの日」でもあり、日本においては国民の祝日にもなっています。家族が集まりやすい機会でもあるので、五月人形を飾った家に家族を招いて、みんなで食事会をすることをおすすめします。赤ちゃんにはベビー用袴などの衣装を着せて、機嫌のよい時間を見計らって人形と一緒に記念撮影をしましょう。最近では着苦しくない衣装もたくさん用意されているので、赤ちゃんが着心地よく過ごせる衣装を選びましょう。
女の子の初節句である「桃の節句」で象徴的なのは雛人形です。雛人形は「雨水(うすい)の日」に飾り始めるとよいと言われています。「雨水の日」とは、二十四節気のひとつで、立春の15日後の日を指します。雛人形は遅くともひなまつりの1週間前には飾り始めることがよいと言われています。人形をひなまつりの前日に飾るのは「一夜飾り」と言われ、縁起がよくないため、避けましょう。
雛人形は地域やしきたりによってさまざまな種類がありますが、現代では飾る部屋のサイズや保管のしやすさを重視して決めても問題ありません。並べ方や人形の数などもバリエーションがあるので、購入の前によく調べましょう。
兜も同じですが、女の子が家にふたり以上いる場合は、なるべくそれぞれの子ども専用の人形をそろえるようにすることが昔からの習わしです。雛人形や五月人形は子どもの身代わりであり、その子に降りかかる災厄を代わりに受け止めてくれる存在とされています。初節句に人形を飾ることは、子どもの健康を願う厄払いの目的もあるのです。
ひなまつりの代表的な食べものはちらし寿司です。ちらし寿司の具である海老、レンコン、豆などは長寿や発展などさまざまな意味が込められており、また見た目も華やかで人気のメニューです。そのほかにも、良縁を意味するハマグリを使ったお吸い物、女の子の豊かな人生への願いが込められたひし餅、ひなあられ、おやつには甘酒や桜餅などを用意することをおすすめします。
こどもの日と同様、ひなまつりの日もなるべく家族みんなで集まって食事をするとよいでしょう。ひなまつりの歌を歌い、家族全員で人形と一緒に記念撮影をしましょう。
初節句の贈り物といえば雛人形や五月人形です。人形は元々子どもの母親の実家(祖父母)が用意するしきたりがありました。母方の祖父母は孫の初節句が近づいてきたら人形の購入について相談、検討をするとよいでしょう。もし母方の実家が人形を用意するとなれば、父方の実家が食事会の費用を負担するなど、両家のバランスをとるとよいでしょう。また、現在では人形代を両家で折半するパターンも多いので、祖父母からのお祝いは金額的に無理のない形を検討しましょう。
そのほか、食事会の場で食べられるお菓子、洋服やおもちゃなど、子どもが喜ぶものをプレゼントしてもよいでしょう。
祖父母がお祝いとして現金を贈る際には、人形代を負担するかどうか次第で金額が大きく変わります。もし人形代を負担する前提で贈る場合は、雛人形の金額にもよりますが、祖父母からのお祝いの金額は最低10万円からとなります。この際に気を付けなければいけないことは、片方の実家の負担だけが大きすぎないようにすることです。現金でのお祝いを祖父母が検討する際には、親がきちんと両家とコミュニケーションをとりながら進めることが大切です。
子どものおじやおばなど、祖父母以外の親戚が現金を贈る際の相場は5000円~1万円程度です。初誕生やクリスマスなど、子どもにまつわるプレゼントの機会は非常に多いので、あまり贈る側の負担にならないようにしましょう。
初節句祝いを贈る場合は、必ず「赤白五本蝶切り」という蝶結びののし袋を選びましょう。結婚祝いなどで使う「十本結び切り」ののし袋は、「一度きり」という意味があるので、初節句祝いに使うと失礼にあたります。関西では、あわじ結びを使うようです。表書きの上段には「初節句御祝」「御初雛御祝」「祝 初節句」などと書くのが一般的です。下段には贈る人の氏名を書きましょう。「お雛様料」など「人形代に使ってね」というメッセージを表書きに込める場合は、きちんとその品物が買えるだけの金額を包むことがマナーです。
人形を飾り、大切な家族みんなで赤ちゃんの健康を願う初節句。お祝いは現金にするか、人形にするか、誰がいくら負担するのか、親が中心になって両家でバランスを取りながら決めていきましょう。お祝い当日は赤ちゃんに衣装を着せて、初節句ならではの献立を用意して家族みんなで楽しく食事会の時間を過ごしましょう。家族みんなが笑顔になれる初節句になりますように!
岩下宣子さん マナーデザイナー
現代礼法研究所主宰。NPO法人マナー教育サポート協会理事・相談役。企業をはじめ、学校・商工会議所・公共団体などで、マナー指導や講演などを行う。「マナーとは相手を思いやること」を信条に、ゼクシィでも悩める花嫁さんへの愛あるアドバイスでおなじみ。マナーに関する著書多数。